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★『仮面の告白』考察★




木多先生のデビュー作、『仮面の告白』についてのレビューです。




解題
第121回(95年3月期)ホップ☆ステップ賞 佳作受賞 (本誌95年24号結果発表)
初出「週刊少年ジャンプ増刊」’95 SummerSupecial」
所収ジャンプコミックス「ホップ☆ステップ賞セレクション」17巻 (96年10月3日発売)
31ページ


梗概

無二の親友(!?)の奈良と塩田。 奈良が惚れた女の子へ告白を頼まれた塩田だが、
なぜかそのまま彼女と付き合うことに。
奈良の怨念を鎮めようと女の子を紹介するが・・・。

            (少年ジャンプ95年24号「H☆S賞結果発表」より)




受賞時の評

作品全体に漂う独特の雰囲気はすんごくいいぞ!!
ギャグのセンスもグッド!!
この持ち味にさらに磨きをかけようぜ!!
敢えて難点を指導すると内容があまりにありがち過ぎるところ。
展開に意外性をっ!!
                          渡邊編集
審査員は梅澤春人
総合27点 最高得点獲得
絵柄
構図
ストーリー
キャラクター
センス
特別基準
<選考基準>絵柄・構図・ストーリー・キャラクター・
センス・特別基準各5点満点の合計30点満点。
1点につき2000円の奨励金を進呈するぞっ!!

他の候補者では、次点に

『ナリトの悩み』とーしー(19)神奈川

がある。
絵柄や年齢・年・県から見て、『たけし』の島袋光年っぽい。
得点は23点(内訳:ストーリー3点以外すべて4点)
(佳作と次点の間に審査員特別賞の「梅澤春人賞」25点の作品がある)



因みに、木多先生は

本多康昭(25)千葉

と、名前を誤植されてしまっている。おまけに本多君の作品は増刊に収録!!とまで・・・。
「木田」って誤植はよく見かけるけど、「本多」ってのは初めて見たよ。


増刊掲載時 巻末コメント
◆ヤクルト・スワローズがんばってますね。僕もがんばるぞぉ〜!!


はじめに

ここから、私の『仮面の告白』評が始まるが、
まずは私が『仮面の告白』に出会うまでの道のりでも・・・。

私が『仮面の告白』の存在について知ったのは、99年(去年)の夏だった。
インターネットを始めたばかりで、初めてマガジン公式サイトに訪れた際、
木多先生のプロフィールの欄に、

<『仮面の告白』(「週刊少年ジャンプ増刊」掲載)でデビュー>

の文字が。
「そっか、『幕張』の前にも読み切りがあるのか!」ということを知った私は、
それが読みたくてたまらなくなったが、読む術を知らない。
だっていつに掲載されたかも書いてないし、そんな昔のジャンプはマンガ喫茶にも
置いてないだろう、と思ったからだ。

当時、私は「増刊」の存在を知らず、
「増刊って何?月刊のこと??」
といった間違った認識しかなかった。

友人にこの旨を伝えてみたところ、
「国立国会図書館にでも行ってみれば?」
とのアドバイスをいただく。

国会図書館??
日本で発行された全ての書物があるというのだから、当然マンガもあるのだろうが、
私には少々、敷居の高い場所であった。
日本文学を専攻しているので、いずれは研究調査のために行くことになるのだろうが、
学校の先生には行くことを止められていた。

国立国会図書館は、普通の図書館のように開架書庫ではなく、閉架書庫であり、
いちいち司書の人に読みたい本を取り出してもらわねばならない。
1冊取り出してもらうのに、40分以上かかり、
「そんなことをしていては、1日が潰れてしまうぞ!
学校の図書館に無かったら、まずは都立の図書館へ行け!」
と、よく教授から言われていた。

「1日潰れてしまうような所」
そんな印象があるうえに、「国会」という名前からも、
何か真面目そうな、マンガを読むために行ってはいけない場所のような気がしていた。
それに、『仮面の告白』の掲載号、掲載年すらわからない。
1回の資料請求に数冊しかできないと聞いていたため、
せめて掲載年すらわからないとダメだろう、と思っていた。


私は今でも1日に1回は『幕張』または『泣くようぐいす』のコミックスorマガジンを読むぐらい、
(↑だいたい1日に5分ぐらいの短い時間で、ぱらぱらめくる程度というのが多いのだが)
木多先生のマンガが大好きなのだが、
それはちょうどマガジンが合併号か何かで、『うぐいす』の新作が2週間読めない時であった。
木多先生のマンガを強く希求していた私は、他の作品も読みたくなり、
デビュー作だという『仮面の告白』に強い関心を抱くようになった。

インターネットで検索してみても、それがいつ頃の作品なのかもわからない。
それで、親切君の多い掲示板で、聞いてみた。
すると、増刊の掲載号だけでなく、それが「H☆S賞セレクション」の17巻に収録されていること、
おまけに『夜明け前』というそれ以前の作品が16巻に収録されてあり、
両方とも塩田と奈良が登場する『幕張』のプロトタイプであることまで教えてくれた。

よし!これなら、国会図書館へ行けるぞ!と準備は整ったが、
やはり敷居は高く、なかなか行けないでいた。


だが、学校のレポートのために必要な先行論文が、学校の図書館にも都立図書館にも無い時があり、
初めて国会図書館へ行くことにした。
主要目的はレポート作成であったが、内心『仮面の告白』が読みたくてたまらず、
国会図書館へ行けることが嬉しかった。

国会図書館へ行き、マンガ雑誌を請求することは気が引けたが、
周りで大昔のサンデーを読んでいる人がいた。
「他にもマンガを読んでる人がいるじゃん!」
と、安心し、いざ請求。

掲載号をわかっていても、何度か請求に失敗してしまったため、
「’95SummerSpecial」を手にするのには時間がかかったが、
ようやく『仮面の告白』を読むことができた。

そして、一枚35円(現在は30円に値下がり)もする法外な値段のコピーを取り、
ご満悦。(計560円かかった)


『仮面の告白』レビュー

この作品の梗概は前述したが、主な登場人物は塩田と奈良と桜井、
そして白鳥麗華という『幕張』の鈴木智恵子のような顔を持つ女の4人であり、
『幕張』とほぼ変わらない。
あと、作品後半部の舞台が「喫茶叶親」だったりと、『幕張』ファンには嬉しいかも。

『幕張』とは登場人物の設定が少し違う。
桜井が巨乳でない上におかっぱで、性格も少し大人しめであり、
塩田のことを「塩田君」と呼ぶどころか、塩田のことが実は好きだったりする。
奈良のウドカットが『幕張』よりも長めだったり、塩田よりも奈良のが力関係が強かったりする。

『仮面の告白』を読んでまず驚かされるのは、『幕張』と比べ絵が稚拙な点だ。

『幕張』連載の1年程前のものだから仕方ないとはいえ、
背景が雑だったり、人物のデッサンが狂っていたりと気になる点は多い。
現在の木多先生の絵でも、手のデッサンの狂いをネット上で指摘する人は多いが、
私はそこも木多先生の絵の魅力だと考えている。
だらんとした、やるきのない腕や指が、かわいらしいというか、見ていて母性本能をくすぐられるというか、
例に挙げると『幕張』の奈良や、『うぐいす』の国吉のだらんとした指などがそれである。
そんなところも魅力に感じているのだが、
『仮面の告白』のそれは、・・
・・と、今途中まで書いてて気付いたんだけど、そんなの初期の作品なんだから仕方ないやー。

奈良のスタンドのデザインがなんだったり、登場人物の顔がギャグ調になるところがアレだったりと、
「うわ〜」って感じのが多いけど、それでも才能の芽を感じさせられる。

だって、これ読んで気になる点って、絵についてのみだし。
選考評で、<内容がありがち過ぎる>と指摘されているが、確かにありがちなオチではあるが、
そのオチに持っていくまでは、作品全体に流れる雰囲気は今までに見たことの無い新鮮なものだ。
『幕張』連載開始当初、よく「『稲中』のパクリだ」って声を聞いたが(←私の周りだけかも)、
これにはそれが感じられないし。

とりあえず、リアルタイムでこれを読んで『幕張』開始当初から木多先生を応援してた
人たちのことが少し羨ましい。


増刊掲載時の扉コピーには、次のように書かれている。

<青春って雲みたいなもんだよな・・・
 形がなくって、いつも気まぐれで・・
 文芸ギャグの決定版!!?>


コピーにもあるように、タイトルは三島由紀夫の同名小説からだろう。
三島の『仮面の告白』は、三島の半自伝的小説といわれているものであり、
女性に対して不能であると気付いた青年の話である。
『幕張』では、ホモでロリコンという設定の奈良であるが、
『仮面の告白』にはロリコンという設定のみで、ホモに関わる描写はない。
「奈良が塩田に、自分の代わりに桜井に告白してもらう」というストーリーから、
「告白」とつくこのタイトルを選んだのだろう。

私がこの作品を読む以前、友人に
「木多康昭のデビュー作『仮面の告白』ってのを読みたいんだけど、どうしたもんかねぇ」
と相談してみたところ、
「それは変態っぽいタイトルだね」
と言われたことがある。
『仮面の告白』での奈良は、その後の『海に生くる人々』や『幕張』と比べると、
その変態性が強調されているわけではないが、彼にはタイトルから変態的な雰囲気が伝わったのかもしれない。


『仮面の告白』を読み、才能を感じさせられたり、笑ったシーンも多かったりしたわけだが、
私は他の2作品の方が優れているように感じる。
赤塚賞の佳作になった『海に生くる人々』は当然としても、
『仮面の告白』よりも絵がずっと拙く、画面の構成なども少々わかりづらい『夜明け前』の方が
ずっと面白かった。
何でこちらが掲載されたのに、あちらは掲載されなかったんだろう、と疑問に思うが、
「絵」かなぁ・・。


おわりに

これを読んで『仮面の告白』を読みたくなった人へ。
4月頃に発行された集英社のコミックス一覧表を見たら、「H☆S賞セレクション」は
まだ絶版にはなっていないようなのですが、本屋に取り寄せてもらおうとしたら、
「在庫が無い」と言われてしまいました。

だから、現在は新刊本屋では手に入れることが出来なさそうです。
古本屋で探し回るかないようです。
都内近郊にお住まいの方でしたら、国会図書館で探すという手もありますが・・・。



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