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★『海に生くる人々』考察★




木多先生の赤塚賞佳作受賞作、『海に生くる人々』についてのレビューです。




解題
第43回(95年下半期)赤塚賞 佳作受賞
初出「週刊少年ジャンプ増刊」’96 WinterSupecial」
所収JCDX「めざせ!漫画家 手塚・赤塚賞作品集」17巻(96年1月15日発行)
31ページ



梗概

悪友コンビが海に出た。目的は当然ナンパ。成果は!?
                      (少年ジャンプ96年1号「手塚・赤塚2大漫画賞第発表!!」より




受賞時の評価
コマ割りやテンポがいい。セリフも面白い
                          秋本先生
総合38点 最高得点獲得
評点は各審査員持ち点5点で、満点は55点。
ただし、審査は評点を参考に話し合いで行われました。


赤塚賞審査委員
赤塚不二夫 秋本治 糸井重里 梅図かずお
江口寿史 清水孝雄 徳弘正也 永井豪
藤子・F・不二雄
堀江信彦(週刊少年ジャンプ編集長)
根岸忠(月刊少年ジャンプ編集長)
●事務局長 茨木政彦(週刊少年ジャンプ副編集長)


○赤塚賞審査委員会より
今回も、たくさんの作品が集まりました。しかし最近
の傾向として、我々をびっくりさせるほどパワーの
ある作品は見当たりませんでした。他人には絶対に
真似のできない、個性的な作品を常に描いて下さい。


私の大好きな糸井さんも、木多先生の作品を読んだんだァ、と思うと、
なんだかとても嬉しくなります。
でも糸井さんは、4位の南寛樹(現・南ひろたつ)の方を誉めてます。
<とんでもない才気を予感させる。アリ戦士などのキャラが最高!!>だってさァ) ちぇ〜。

最終候補の4作品のうち、2作品が裸の男二人組の話っぽい。
稲中系?やっぱ当時の流行??



合わせて受賞作10本!!
第50回手塚賞 第43回赤塚賞
入選 『メイプルハウスの私たち』
山川かおり(19)東京
入選 該当作品なし
準入選 『Limit』
春夏キサラ(24)東京
準入選 該当作品なし
『トミイズハート』
錠崎秋雄(21)東京
佳作 『海に生くる人々』
木多康昭(26)千葉
佳作 『RUNE・QUEST』
三好直人(23)東京
『発進!!友達いないいない部』
島袋光年(20)神奈川
『TAKUYA2−拓也の事情』
籠島英太(24)東京 
『戦国の勘太助』
春山野原(23)岐阜
『KIDS』
水元昭嗣(22)神奈川
『おやじのゲンコツ』
南寛樹(19)石川

手塚賞入選に、山川かおり、佳作に『画ーROW』の水元昭嗣、
赤塚賞佳作には、『世紀末リーダー伝たけし』の島袋光年と、
「週刊少年サンデー」で『漢魂(メンソウル)』連載中の南ひろたつがいます。

南ひろたつは、「南寛樹」名義でジャンプ本誌に3回ほど読みきりが載ってます。
96年16号の『おやじのゲンコツ』と98年45号の『コンチク笑ゥ!!』と99年2・3号の『マッドドッグスーMADDOGS−』です。
公式プロフィールによると、サンデーでは95年に「サンデーまんがカレッジ」努力賞をもらい、
96年サンデー増刊号でデビューってことになってます。(でもデビュー時期はジャンプの方が早かったような気がしますが)

それにしても、マガジン・ジャンプ・サンデーと、三大少年誌にそれぞれ連載してるだなんて、第43回の赤塚賞は豊作ですね。

因みにどうでもいいことですが、手塚賞の春夏キサラと籠島英太は森田まさのりのアシスタント経験者のようです。
『ろくでなしBLUES』最終回のスタッフロールに名前が載っていました。
春夏キサラの方はこの頃はもうスタジオ・ヒットマンを退社していたようです。
篭島英太は第45回(93年上期)手塚賞佳作も受賞しています。
その時の同期の園田辰之助(同じくスタジオ・ヒットマン出身)の単行本(「K.O.マサトメ」)のスタッフ欄にも名前がありました)
(ホントどうでもいい話ですが…)



審査委員による作品批評

絵が個性的で、コマ割りやテンポもいい。キャラもしっかりしている(秋本先生)
テーマがつまらない。ギャグをテレビに頼りすぎ(清水先生)
”ブス”キャラが出てくるのは当然過ぎるが、セリフに光るものがある(堀江WJ編集長)
絵は無理がなくてよい。タイトルが内容にくらべ大ゲサ(梅図先生)
ギャグのねらいは成功しているが、全体的に小じんまりしていて、つき抜ける笑いがない(永井先生)
無理にギャグに走ろうとしている(徳弘先生)
欲望のままに描いていて、ストレートに伝わる笑いがある(根岸MJ編集長)
ギャグ漫画は特に、いろんな分野に目配りをすることが重要で、その点この人は、いろんなものから
吸収することができる人だと思う
(江口先生)
「セリフ」がいい。ただ、漫画なのか劇画なのか?絵はもう少し、どちらかに寄って欲しい(糸井先生)
セリフが多すぎる。つまり、言葉のやりとりに頼り過ぎているということだと思う。今後に期待する(赤塚先生)

                       (「めざせ漫画家!手塚・赤塚賞受賞作品集」17巻より)


▼清水氏の「ギャグをテレビに頼りすぎ」には、思わず笑ってしまいました。木多先生のマンガを一言で的確に言い表してるよ!!5年経った現在でも、ギャグをテレビに頼ってるところは変わりませんが、それが木多先生のマンガの魅力の一つだと思っています。その点も好き嫌いの分かれるところなのでしょうが、元々ギャグ漫画なんて風化しやすいものですし、他の人より少しぐらいテレビネタが多くても、まぁいいんじゃないでしょうか。(あ、別に清水氏はテレビネタのギャグ=風化しやすいからという理由で注意してるのではなく、ただ単にテレビネタの多用が嫌いなだけかもしれませんね)
▼ところでこの清水孝雄って誰?検索してみたら、東大医学部教授とTBS技師室長と弁護士しか出てこないんですが。しかも圧倒的に東大医学部教授が多いから、この3人の中でもこの人が1番の有名人みたい。ってことは、手塚赤塚の審査員をしていたのは東大医学部教授なのでしょうか?誰か教えてください。
▼堀江氏の「セリフに光るものがある」との評は、読んでてなんだか嬉しくなってしまいました。
▼梅図先生「タイトルが内容にくらべ大ゲサ」って、それがいいんじゃないですか!元ネタを知っている・知らないにかかわらず、あのバカバカしさとタイトルのギャップも魅力的なのですが。
▼『海に〜』をあまり評価していない徳弘先生ですが、同時受賞のしまぶーにはベタ褒めでした。
▼江口寿史の評を読んで、ちょっと泣きそうになってしまいましたよ、私!江口先生、ありがとう!!・・って、何でこんなにも喜んでるのでしょうか。「ギャグ漫画は特に、いろんな分野に目配りをすることが重要で、その点この人は、いろんなものから吸収することができる人だと思う」だなんて、たった31ページを読んだだけで、そこまで感じ取る江口先生素敵!私はこの1文を読んで、投稿作3作と『幕張』『うぐいす』のそれを感じさせる箇所が一瞬にして走馬灯のように浮かんできてしまいましたよ。
▼セリフについて言及している人は3人。「光るものがある」「いい」「多すぎる」と、2対1で肯定派の方が多いですね。
▼WJ96年1号の赤塚賞の発表記事では、この中で秋本先生のコメントだけが掲載されていました。秋本先生のコメントが10人の中で一番簡潔にまとめられているからでしょうか。それとも秋本先生が『海に〜』を1番推してくださったからでしょうか。後者だったら、私の秋本先生を見る目が変わってしまうのですが!(今の「こち亀」でもひいき目に読んでしまいそう)
▼あれ?イバちゃん(大富豪)はコメントしないんですか?事務局長は中立の立場を取るのでしょうか。皆の意見をまとめるだけで発言権はないのでしょうか。イバちゃんが『海に〜』をどう評価するのか気になります。WJの副編集長は現在、茨木さんと高橋さん(デブロリ鷹橋)を含めて3人いますが、次期編集長は茨木さんだったらいいいなぁと思う私は、MOMOTAROHファン。



増刊掲載時 巻末コメント
◆2回目の増刊(スペシャル)掲載でうれしいです。気に入っていただけたら幸いです。




はじめに

『海に生くる人々』の存在は、初期3作の中で一番最後に知った。
木多ファンの集う掲示板で、初期作品に話題が及んだ時に、
赤塚賞佳作を受賞したのはこの作品だと、増刊に掲載されたという情報と共に教えてもらった。
(「キン肉マニア」のMIXマンさん、ありがとう!!)

初期作品は、『夜明け前』と『仮面の告白』の2作品のみだと思っていた私は驚いた。
だって『仮面の告白』は『幕張』連載開始の半年前の作品だし、
半年という短期間にもう1作発表されているということに驚いたのだ。
そういや、木多先生が赤塚賞佳作を受賞したという話は聞いたことがあったし、
もう1作あるということを考えなかったのは、今から思えば変な話だけど。

情報を得たら、即効国会図書館へ。
これと同じ日に、『夜明け前』もコピーした。

赤塚賞受賞したのが『幕張』連載の2ヶ月前で、増刊に掲載されたのが1ヶ月前だから、
受賞後超短期間での連載だなぁ。
(そういや、『幕張』初回のジャンプ表紙にも「スピード連載」とか書いてあったような・・)


『海に生くる人々』レビュー

タイトルは葉山嘉樹の同名小説から。
って言うか、そのタイトル選択渋いって!!
葉山嘉樹の『海に生くる人々』ってあんまメジャーじゃないよねぇ?
葉山嘉樹自体、文庫化されてない、今ひとつマイナーな作家だし。
やっぱプロレタリア文学に対する世間の評価は低いみたい。
『仮面の告白』と『夜明け前』は、高校の文学史にも出てくるので、タイトルの元ネタが
わかりやすいけれど、葉山嘉樹『海に生くる人々』なんて読んだことある人自体、少なさそう。
『海に生くる人々』は葉山嘉樹の代表作の一つだが、『セメント樽の中の手紙』や『淫売婦』の方が
知名度は高いのではないだろうか。
因みに私は高校生の頃、『セメント樽の中の手紙』を読んで感動し、
プロレタリアにハマりかけたけど、現在ではあんまり・・・・。やっぱ思春期だったから・・・。
だが今でも、その叙情味のある作風は好きだ。
(葉山話おしまい!)

タイトルの元ネタはわかりにくいけれど、このマンガに一番しっくりくるなぁ、とは思う。
内容にとても合ってるし。

登場人物は塩田と奈良。そして塩田の彼女の桜井に、鈴木智恵子のようなゴリ子。広瀬和子。

巨乳ナンパ目的で、海に出かけた塩田と奈良。
その海で、ナンパされた男とイチャつく桜井に会う。
彼女に裏切られ傷心の塩田のために、奈良は女をゲットしようとするが失敗。
何度かの失敗の後、塩田はかわいい女の子と赤木キャプテン似(実は2人とも桜井の友達)をゲットし、
ゴリ子を奈良に任せるが・・・・!!といったストーリー。

塩田はセンター長めの和田アキ子カットだし、奈良はウドだしで、ほとんど『幕張』と一緒。
桜井の髪がショートだということと、巨乳ではないという点、
塩田の彼女という設定という点は違うけれど、性格は『幕張』の桜井と同じで凶暴である。
股間へのスクリューパンチや、みぞおち蹴りを奈良相手に炸裂し、
パワフルで強引な性格は変わらない。そしてそこがまた魅力的である。
(でも塩田を「くん」付けで呼んだりする)

ゴリ子の登場は物語中盤で、ゴリ子の存在自体がオチになっている『仮面の告白』とは、
そこが違う。オチに行くまでに、ゴリ子の勘違いが炸裂する。

ギャグや画面構成、作品全体を流れる独特な雰囲気、ネタへの持っていき方など、
『幕張』初期と全く見劣りがしない。 天賦の才なんだろうなぁ。
(でもストーリー的には『夜明け前』が一番好き)

読み切りに、『幕張』と同じエピソードが一つも無いところもすごくいい。
登場人物はほとんど同じなのに、どれも微妙に設定が違うし。
短期間での連載なのに、『幕張』初期に中弛みが無いところとか、ね。
比較するのもなんだけど、義山亭石鳥『河童レボリューション』を思い出した。
連載までに何度も本誌に読み切りを掲載し、やっと連載が始まったと思ったら、
読み切りの時と全く同じ始まり方に同じエピソードを何回も使用。
急激につまらなくなってコミックス2冊分で
打ち切られた『河童レボリューション』(好きだったんだけどねぇ・・)。
何で義山亭石鳥は木多先生みたくできないのかなぁ、とか思ったもんだよ。


おわりに

初期3作の中で、この『海に生くる人々』が一番読むのが困難です。
何しろ「H☆S賞〜」みたく、コミックスに収録されてないため、古本屋で探すことができません。
「週刊少年ジャンプ増刊 ’96 WinterSupecial」 に発表されたのみなので、
持っている人に貸してもらうか、東京近郊の人だったら国会図書館に読みに行くこともできるけど・・・。
これを書いた2000年5月当時は知らなかったのですが、JCDX「めざせ!漫画家 手塚・赤塚賞受賞作品集」の17巻に収録されています。入手困難には違いありませんが


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