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★『夜明け前』考察★




木多先生のデビュー前のH☆S賞特別賞受賞作、『夜明け前』についてのレビューです。




解題
第116回(94年10月期)ホップ☆ステップ賞 特別賞(真倉賞)受賞 (本誌95年2号結果発表)
初出 ジャンプコミックス「ホップ☆ステップ賞セレクション」16巻 (96年4月6日発売)
31ページ



梗概

塩田はJリーグ入りが決まっていながら、数学の点が悪く高校を卒業できない。
友人の奈良に泣きついたところ、奈良はテストの問題を盗み出せと言う。
夜の学校にしのびこんだ2人、警備員に見つかったのも知らず…。

          (少年ジャンプ95年2号「H☆S賞結果発表」より)



塩田の点数が悪かったのは、数学ではなく英語UBです。
誤植、もしくは単行本収録にあたり投稿時とは変えたというのも考えられますが・・・。


受賞時の評

ほとんど全編を通して展開される、二人のバカバカし
いやりとりには、思わず笑ってしまった。妙にカッコを
つけず、下世話な欲望のままにキャラが動いているのが、
かえって爽快だ。このギャグセンスは、これからも大切
にしてほしい。ストーリー自体は、わりと定番といえる
話だし、展開がやや唐突な感じも・・・。途中でオチが見え
てしまうあたりも残念。ツメの甘さを克服せよ!あと、
トーンの使いすぎにも要注意だ。

審査員は真倉翔
総合23点 最高得点獲得
絵柄
ストーリー
キャラクター
構図
センス
特別基準
<選考基準>絵柄・構図・ストーリー・キャラクター・
センス・特別基準各5点満点の合計30点満点。



あと一歩!! 特別賞進呈だ!!
獲得賞金5万円!!&最高得点獲得で単行本に掲載決定!!

木多(きだ)君には真倉賞としてサイン入り色鉛筆セットも進呈!!



「きだ」とルビが振ってあるのが気になります。誤植かしら。



はじめに

木多先生のデビュー作、『仮面の告白』の掲載号の情報を得ようと、
ネット上の匿名掲示板で質問したら、こんな答えが返ってきた。

>お探しの『仮面の告白』はジャンプコミックス「ホップ☆ステップ賞セレクション」の17巻に収録されています。
>16巻にはその前の作品の『夜明け前』が収録されています。
>両方とも、塩田と奈良に、桜井や鈴木智恵子まで出てきて、『幕張』のプロトタイプです。

え?!『仮面の告白』だけじゃなく、デビュー前の作品もコミックス(「H☆S賞セレクション」)に収録されてるの?!
それもぜひ読みたいわ!!
しかもタイトル、『夜明け前』って・・・・・。そういう路線で行きますか!
「H☆S賞セレクション」というコミックスを本屋で見たことがなかったため、絶版になっていないのかが気になる。
手持ちのジャンプコミックスの最新刊の裏の「既刊コミックス」のページを見ると、「H☆S賞〜」入ってるよ!
やった!絶版になってないよ!!
早速本屋に注文。
1週間後。「残念ながら、『H☆S賞〜」の16巻・17巻は問屋に在庫がないため、
取り寄せることが出来ません」との本屋からの返事。
えー!それって絶版?!

それから、古本屋めぐりがスタート。
まずはメジャーどころで、まんだらけ中野&渋谷店から。
無いよー。「H☆S賞〜」の12巻までは揃ってたりするのに・・・・。
『仮面の告白』と『夜明け前』探しのおかげで、今回初めて「H☆S賞〜」のコミックスに触れてみたが、
ホント、有名な人って少ないんですね。
1冊に1人か2人連載作家が載ってればいい方、って感じ。
あとは聞いたことない人ばかりだよ。
連載作家っつっても、20週打ち切りの人とか、そんなん。
1冊丸まる知らない人、って巻もあったし。

古本屋だけでなく、新刊本屋やまんが専門店にも足を運んだが、「H☆S〜」はとんと見かけない。
現物を手に入れることは諦め、国会図書館でコピーを取ることにした。
どうせ31ページだし、一枚35円コピーだから1作品560円。そんぐらいの出費なら別にいいかなぁ。
古本屋めぐりの交通費&時間を考えたら、こっちの方が安上がりだ!GO!!
(注:私が『夜明け前』をコピーした2000年3月はコピー1枚35円だったが、
 4月からは1枚30円に値下がりした。それでも高いねぇ。ま、国の施設っすから)

やっとの思いで読むことができたよ!『夜明け前』!!
因みにその日は、赤塚賞佳作の『海に生くる人々』も一緒にコピーした。
国会図書館は自分でコピーを取ることができず、複写係に頼まなくてはならないため、
マンガの複写を頼む時はちょっぴり恥ずかしいよ!
しかも決まって1ページか2ページはコピー失敗してくれるため(やっぱり分厚いしねぇ。仕方なし)、
やり直しコピーを請求せねばならず、ちょっと恥ずかしい。
「このページ、上が1cm切れちゃってるんですけど・・・・」って司書の人に言いながら、
司書の人も「この女、マンガをコピーしてるよ!図書館でマンガ!!」ってな目で見てくる。(←被害妄想)

「H☆S賞セレクション」には、該当作品だけでなく、「履歴書」という作者の自己紹介ページや、
編集部からの「作品評」のページもあってお買い得!!
「作品評」の文章は、ジャンプ本誌に掲載された「H☆S賞選考結果」の選評とは
微妙に文章が違ってて、なんとなくお買い得。

因みに、情報交換をしている木多先生のファンの人たち2人がこの16巻を手に入れてて羨ましかったよ。
だって、国会図書館はカバーが外された状態で保存されているから、
カバーの描き下ろしカラーが見れないんだもん。残念。


『夜明け前』レビュー

タイトルは、島崎藤村の同名小説から。
『仮面の告白』『海に生くる人々』といい、『幕張』連載前の初期3作は、文芸路線(タイトルのみ)だ。
タイトルは、夜が明ける前に、学校からテスト問題を盗み出すというストーリーからか。

登場人物は塩田と奈良。そして英語教師・中井幸男に、
塩田の片想いの相手が桜井美保(でも桜井はちょっとしか出てこないけど)。

英語で赤点を取り、このままでは高校を卒業できないと英語教師・中井から言われた塩田は、
追試の勉強を教えてもらうために奈良の家へ。
だが、奈良の提案で深夜の学校へ追試用のテストを盗みに行くことになった。
奈良の協力で無事にテストを盗むことができた塩田だが、
実は奈良に陥れられていた・・・・!!ってなストーリー。

94年の作品で、絵が違い過ぎるということにまず驚かされる。
まァ、『幕張』の2年前だしね。
その絵の違いっぷりは『仮面の告白』以上。二人の髪型が違うってのも理由の一つかも。
前髪の長すぎる塩田と、角刈りの奈良が新鮮
(『仮面の告白』と『海に生くる人々』の奈良はウドカット)。

そして、塩田よりも奈良が活躍していることも、特筆すべき点だ。
『仮面〜』と『海〜』はオチに奈良を持ってきているが、『夜明け前』のオチは塩田。
しかも塩田は奈良の策略により、女子(桜井含む)から変態呼ばわりされる。
奈良大活躍!!

校舎新入の手口とか、警備員からの逃れ方とか、私的にはとても新鮮だった。
ギャグもいいし、テンポだって抜群だし、塩田のふとした仕草はかわいらしいし、
才能の芽ってこういうのを言うんだろうな、って思った。

作品評(このページの上に全文引用)に、
<ストーリー自体は、わりと定番といえる話だし、展開がやや唐突な感じも・・・。
途中でオチが見えてしまうあたりも残念。>
とあるが、「どこが?!」って感じ。
『仮面〜』や『海に〜』の方が、よっぽど定番なストーリーなのに・・・。
(↑2つとも、鈴木智恵子似のゴリ系ブス女が出てくる女だし)
私の弟もこれを読み、「途中でオチが見えるのは仕方ないじゃん!だってそうでもしないと
辻褄合わなくなっちゃうじゃん!面白いって!!これ!」と、気に入っていた。
弟の中では、『仮面の告白』よりも上らしい。
私の中でももちろん上だし、ストーリー的に見たら初期3作の中で一番面白いと思った。
読んでてハラハラさせられたし。
(絵とか画面の構成も加味したら、『海に〜』が一番よかったけど)

作品評の<トーンの使いすぎ>ってのは同感。なんかのっぺりしてるし。
でも次の『仮面の告白』では、それが解消されている。
あと桜井の顔が江口寿史風味だ。


おわりに

上の「はじめに」でも書いたけど、読みたい人は古本屋めぐりで頑張って!
もしくは東京近郊の人だったら国会図書館へGO!
(私は回し者か、ってぐらい国会図書館が好き☆)




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