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妻が家を出ていってから何ヶ月経っただろうか?街の中の木々は少し黄色や赤に色づいてきた時期だった。ある日僕の携帯に電話が入った。「子供たちは元気?これから私の荷物を取りに行ってもいい?衣類だけだけど....。」と言うので「ああ、かまわないけど......。子供たちに会っても、お前のことは忘れているかもしれないよ。知り合いのおばさんって言う事にしておくけどそれでもいいかい?」もしかしたら上の子はお母さんの事を薄っすらと覚えていたかもしれないが、お母さんと呼ばせるわけにはいかなかった。勝手に子供たちを置いて出ていった人には今更お母さんと呼ばせられるものではない。「.......。いいわよ。」と少し小さい声で彼女は言った。
しばらくして赤い軽自動車が家の前に止まった。車から降りてきたきた人は化粧が厚く、見るからに夜の女といった感じだった。しかし、別れた元妻に間違いはなかった。これでは子供たちもにも「おばさん」でごまかせるかもしれない。家に上がるなり、サッサと衣類をバッグに入れその他の雑貨類は紙袋に入れた。残ったものは捨ててくれという事だった。
僕にはもう未練というものはなかったが、僕の母は、もう一度やり直してもらいたいっていう気持ちもあったようで、皆でデパートに買物に行くことになった。僕と上の子が僕の車に乗り、下の子と母が彼女の車に乗ることになった。久々に家族全員で出かけたのだが、これが子供たちと彼女が会うってことが最後になった。子供たちにお母さんって呼ばせられるものなら呼ばせてあげたいけど、別れる時が辛くなるはず。泣きじゃくる子供たちは見たくないので、「おばさん」と呼ばせた僕は『これで良いのだろうか?いや、本当の事を言ったほうが....』と何度も自問自答した。車の中で上の子が「あの人、ママでしょ?ねえ、そうだよね。」と言った。やっぱり上の子は気づいていたらしく「違うよ、ママの知り合いのおばさんなんだよ。」ととぼけて言ったけど、後になって考えれば本当の事を言ったほうが良かったのかもしれない。
他人から見ればどこにでもいるような家族に見えた僕達にも本当に最後の別れが来てしまった。子供達は無邪気に「バイバイ、また遊びに来てね。」なんて言っていた姿を見て僕は涙が止まらなかった。逃げたかぁちゃんに未練はないと思っていた僕も家族の一員だった彼女の後ろ姿と子供達を見ているとどうしようもなかった。
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